【前回までのストーリー】
書くだけで夢が叶う──
そんな言葉を信じて、僕は今日もノートにペンを走らせていた。
けれど、その一方で、ずっと感じていた。
「なぜ、書いても叶わない夢があるのか?」
「本当に、僕は“叶えたい”と思っているのだろうか?」
あの夜、ノートから差し込んだ一筋の光が導いてくれた。
辿り着いたのは、“書き続ける者”だけに開かれる場所。
そこは──禁書図書館。
僕は、千年を生きる少女・セフィラと出会い、
願望実現の“本質”を学び始めた。
図書館の静寂の中で
その日も、禁書図書館は静かだった。
無数の本が並ぶ書架、深い蒼を湛えた天井、
そして空気のように自然に、彼女──セフィラはそこにいた。

「夢が叶わぬ理由、それはの──“叶えたくない”からじゃ」
不意にそう告げられて、僕は思わず聞き返した。
「……え? どういうこと?」
「おぬしの“意識”は、たしかに夢を願っておる。
じゃが、“無意識”の奥底では……本当に、それを望んでおるのか?」
セフィラは、懐から一冊の光る本を取り出し、
静かにページを開いた。
◆ 潜在意識と顕在意識の話
「人の心は、氷山のようなもの。
海面に出ておる“意識”は、ほんのひとかけら。
海の底に眠る巨大な塊──それが“潜在意識”じゃ」

【📖禁書目録 第7章より】
顕在意識は願いを唱え、潜在意識は現実を選ぶ。
潜在意識の許可なき願いは、いずれ霧となって消える。
「たとえば、“自由な時間が欲しい”とノートに書いていたとする。
しかし、潜在意識では“忙しくしていないと不安”とか、
“人に頼られる自分でいたい”という思いが強ければ──どうなる?」
僕は息を呑んだ。
……思い当たることが、いくつもあった。
自分の中の“矛盾”
たしかに、僕は自由を望んでいた。
でもどこかで、「仕事を手放すのが怖い」と思っていたかもしれない。
誰かに必要とされている“忙しい自分”に、安心していたのかもしれない。
「……じゃあ、僕は、
“自由になりたい”って書きながら、
“自由になるのが怖い”って思ってた……?」
「うむ。願いが叶わぬのは、
“潜在意識がその願いを拒んでおる”時じゃ。
つまり──夢の“鍵”を持っているのは、もう一人の自分ということじゃな」
書くことの意味
セフィラはそっと本を閉じ、僕のほうへ向き直る。
「だからこそ、“書く”のじゃよ。
書くことで、おぬしは“意識の奥”に語りかけることができる。
その言葉が、潜在意識を“納得”させ、現実を動かすのじゃ」
「……書くことで、“鍵”を渡すってこと?」
「そう。
けれど──ただ書けばよいわけではない。
届く“言葉”、届かぬ“言葉”がある。
それを次に、教えてやろう」
しいの気づき|夢を叶える鍵は、内側にあった
今まで僕は、
夢を叶えるために、環境やチャンスを求めてきた。
けれど、本当の“鍵”は、外にはなかった。
自分自身の内側──潜在意識にあったんだ。
どれだけ願っても、
潜在意識が「それは危ない」「無理だ」と思っていれば、
その願いは、そっと霧のように消えてしまう。
でも、「書くこと」には力がある。
内なる自分と対話し、鍵を渡す──それが夢ノートの本当の役割。
セフィラのことば
「おぬしはもう気づいておるな。
夢とは、ただの願いではない。
“潜在意識に届けられた命令”こそが、現実を動かすということを──」
彼女は微笑み、背後の書架へと歩み寄る。
「次は、“言葉の使い方”じゃ。
言霊の力、命令の形。
ノートに書いたその一文が、どれだけの力を持つか──学ぶがよい」
書架の奥がゆっくりと開いていく。
光の向こうに、新たな叡智が待っていた。

しいの学び|夢を叶える“鍵”を持つのは誰か?
- 願いを“唱える”だけでは届かない
- 潜在意識という“もう一人の自分”が、夢の実現を左右する
- 書くことで、内なる自分に“選択”を委ねる
- 本当の変化は、内側から始まる
次回予告|第三話
📘言葉の“命令力”と潜在意識の扉
叶えるための“書き方”とは?
届く言葉、届かぬ言葉──
願いを現実に変える、“命令文”の秘密を明かす。

